ZERO HOUR

 

『いばらの王冠』

 

門を開くと、そこは森の中。

 

木漏れ日の中、森を統べる妖精達の王が

数千年ぶりの荘厳な戴冠式を行っているところです。

 

森に住まう獣達と、海を越える渡り鳥たちの使者。

森で糧を得る人間の狩人たちからは

一年は食べるに困らないほどの捧げ物が届いています。

 

楽隊が演奏を終えると、

巨木のうろの中からしずしずと女官たちが現れました。

いよいよ戴冠式にだけ披露される

歴代の王たちを権威付けてきた王冠の登場です。

 

複雑にからみあったツタを払い、

王冠を包む繭をゆっくりとはがすと、

そこに現れたのはいばらの冠。

 

招待客と貴族達が息を飲みます。

若き王は驚愕を隠せず、震える手で一旦いばらの冠を

掴んだものの、呆然として再び台に戻します。

 

王の重い責務と不断の自己研鑽、戒めを含んだ王冠は

作られた時のまま鈍い光と鋭い棘を蓄えて

若き王の頭に置かれるのを待っていたのです。

 

その棘に、その不相応な「軽さ」に、王は耐えられるのでしょうか。

我々は彼の視線と指の先をただ見守るしかありません。