EPISODE

 

『虹の影を追って』

 

門を開くと、そこは昼下がりの庭。

 

時折吹き抜ける初夏の強い風が

白い洗濯物を揺らしてぱたぱたと音を立てると

まどろむ犬が大儀そうに片目を開いて

またすぐに昼寝に戻ります。

 

縁側ではむつきにくるまれた赤ん坊が

うたたねする母親の膝の上で

空の彼方を見つめています。

 

視線の先には雨上がりの虹。

少しだけ通りかかった天気雨に呼ばれて

今はもう帰ろうとしているところ。

 

それからものの5分もしないうちに

何事も無かったかのように元通りの青空。

 

赤ん坊はもう一度虹が見たくて何度もまばたき。

そうするとまた同じ風景が戻ってくるみたいに。

 

やがて泣き出した赤ん坊に、

目を覚ました母親が優しく声をかけて

涼しい部屋の中に歩いていきます。

 

赤ん坊は小さくて

今はまだ泣くことしか出来ないけれど

自分の足で立てるようになったら

きっと虹を追いかけて

やがて虹の住処にたどり着くに違いありません。