『ONE LIFE,ONE DEATH』

 

オススメ度:99

 

移籍後間もなく発表された、個人的見解で言えば現段階での最高傑作。

 

路線的には相変わらずデジタル風でもあり、インダストリアル風でもあり。

歌詞世界はいつもどおり衝動的で刹那的、即ちタナトスに満ちて。

 

カイン」「女神」「FLAME」とミドルテンポ&バラード系の充実が嬉しい。

特に「FLAME」はこれまでのどのアルバムの最終曲よりも感動的。

 

それにしてもいつも思う事だが、『BUCK-TICK』のアルバムというのは

どうして装飾的な言葉に満ちながらここまですがすがしく空虚なのだろう。

深い海の底で、一人きりで星空を見上げているような安らかな気持ちになる。

 

『Baby,I want you』

いきなり櫻井の十八番、下世話な歌詞で開幕。

BUCK-TICKはこうでなければ。

今作ではVoの色気というか艶が目立つが、ここでは

割とエモーショナルなVoスタイルを通している。

それにしても「デラシネ」とは成る程いかにも、らしい。

 

『CHECK UP』

続いては今井のデジタルエフェクト系お遊び満載の一曲。

選ばれたのは1か2か。

「一粒だけ光があればいい」

このてらいのない刹那主義こそ紛れもなく彼らがこの世界の

本来の住人であることを示していると言えよう。

 

『GLAMOROUS』

優しく囁きかけるような櫻井のVoが

この曲にラブソングとしての生命を吹き込む。

静かに浮き上がり、海流を舞い、再び静かな海底に消えていく。

そんな風に描かれた佳曲である。

 

『細胞具ドリー:ソラミミPHANTOM』

歌詞とは裏腹に必死で自己の根源の欲求を振り切る

「未練」を感じさせるメインVo、

傍若無人に主張を連呼するサブVo。

ソラミミ(幻影)はどちら?

ボサノバ(現実)はどちら?

 

『カイン』

聖書の登場人物名を借りながら、中身は純然たる狂気の恋歌。

楽しげに韻を踏む歌詞は生真面目に狂気を漸増していく。

 

『Death wish』

自虐に満ちたBUCK-TICKらしいポップス。

狭い世界の中で精一杯翼を広げて綺羅を競う

現代の飛ばないイカロスたちへの献歌、といったところか。

彼らには「キリスト」ではなくて「キリストに似た男」がよく見える。

 

『女神』

情感という点では紛れもなく本作の白眉。

散りばめられた全ての象徴はこの女神が万人の物ではない

「異端の女神」である事を指し示すが、その閉塞の中で

彼らはなんと満ち足り,そして完成されていることだろう。

 

『サファイア』

「夜」の病的に丹念な点描。

つまり眠れない夜の記憶。

欲望に満ちたこの世界はしかし朝を待たず

月の光の中でくずおれる。

 

『RHAPSODY』

慌しい、だが断固とした夜明け。

地には足、ポケットにケータイ、羽と花。

イカロスはここでは雄雄しく太陽を目指している。

冒険者が飛び立ったと言う事は、最後に見える風景に向けて

あらゆる物が終わりの準備を始めたという事なのだ。

花はただ静かに咲く事を要請されるが、それは冒険者達にとっての

花の「価値の軽さではなく「存在の重さ」を表している。

 

『FLAME』

最高のラブソング。

愛情を捧げるという現象を彼らが詩的に表現するとこうなる。

恋人達はやがて消える炎の美しさを一途に追いかけ。

そして花はここでは何の制約もなく、あるがままに咲いている。

炎は花を写したその瞬間、おそらく永遠を垣間見るのだ。