『TABOO』

 

オススメ度:89

 

「Hurry Up Mode」「セクシュアル×××××!」

「Seventh Heaven」と3枚のアルバムをリリースしていた

『BUCK-TICK』が1989年に発表した4th。

(公式サイトではインディーズ時代の「Hurry Up Mode」を

1stとしていないため、3rd標記)

 

ロンドンでレコーディングされた本作は『BUCK-TICK』が

それまでのビートロックから発展的に脱却し、

貪欲な雑食主義、耽美主義の時代へとその第一歩を

踏み出した作品と言う意味で非常に重要なアルバムである。

 

Gは前作までの闊達なメロディーを大幅に捨て、

ある時はノイズであったり尖ったリフワークであったりする

「音色」つまり楽曲の表情としての歪みの表現に徹している。

 

「EMBRYO」「TABOO」の宿命的な暗さと重さが代表するように

彼らがゴシック的世界観、そして生への渇望としてのタナトスを楽曲に

反映させ始めた出発点であり、ビートロック時代から蛹を破るように変化する

荒々しいエネルギーが未熟さも含めてそのままに封印されている。

 

最近はこのアルバムの収録曲はもう演って無いようである。

個人的には「EMBRYO」とか演って欲しいのだが・・。

いつか生の「EMBRYO」を聞いてみたいものだ。

 

『ICONOCLASM』

まずは警告、つまりメニューの開示。

情熱を騙る単語の冷たい響き。

この曲は特別なアルバムのための特別なファンファーレである。

 

『TOKYO』

街の情景。

しかし同時に見せなくてもよい何かを見せあって

崩壊の危機にある二人の姿を歌った曲でもある。

精神鑑定は誰の為か?

男の為か、女の為か。

おそらくは両方の為であろう。

 

『SEX FOR YOU』

愛において。

エゴイスティックに世界を飾る事だけを考えるロマンチストは

しばしばその過程の中で大事な何かを見失う。

ロマンチストの皮を被ったエゴイストの愛情に生じる、

これは許しがたい矛盾である。

 

ロマンチストを自称する人間がまずしなければいけないのは、

自らの主義にふさわしい仕草で相手に全てを捧げる事なのだ。

 

『EMBRYO』

胎児は未来を選べない。

選択の権利は一切無い。

不自由な子宮の中で感じる歓喜は

何もかも失った人間が感じる無為の快楽に等しい。

胎児が望む唯一の事象は

孤独の中で子宮を独占する事。

その具体的な方法こそ「kiss」。

 

『J』

テロリズム、刹那主義、ロマンチシズム、ダンディズム。

曲としての出来はともかく、BUCK-TICKの

エッセンスが詰め込まれた曲である事は間違いない。

心が崩れる、涙が止まらない夜。

いつもどおりの。

 

『FEAST OR DEMORALIZATION』

どれほど美しく言葉を飾っても、

恋人達はいつかお互いの不可侵な領域を冒しあわなければならない。

惑いもまた好奇心。飾る事もまた冒険心。

「誘惑」と、「自ら望んでする陥落」のための。

 

『ANGELIC CONVERSATION』

BUCK-TICKの世界は本作から

極端な象徴主義のエリアに踏み入り始める。

イコン(偶像)を掲げた少年が見た不思議な世界は、

これからBUCK-TICKが分け入っていく世界の一部であろう。

それは不可思議な文物に彩られた、彼らだけの細密画である。

 

『SILENT NIGHT』

恋人達が過ごした聖なる夜の物語。

想い人は自らの情熱のために絶対者の

その表象の前に全てを投げ出し。

想われ人はその深い愛情に報いるために

仮想の世界で彼のための特別な罪を捧げる。

 

『TABOO』

有名曲のフォーマットを借りて歌われる「瞬間」の恋。

つまりモラルを忘れられる間だけの至福。

けしの花の魔力は無くとも、背徳そのものが彼らにとっては麻薬。

 

ここに描かれているのは、静かに力強く歌われる至上の恋。

なぜなら仮象のまま崩れゆく幻想に捧げる賛辞ほど純粋な賛辞は

この世界には他にないのだから。

 

『JUST ONE MORE KISS』

偶像を呼び出して始まったこのアルバムは

消え去りゆく偶像への熱狂的なkissで幕を下ろす。

幻想の都、自らの命、持てる物を全て捧げて偶像の前に跪く男。

それはBUCK-TICKの世界に取り込まれた観客の姿でもある。

観客の前に「魔法の鏡」を置いて見せるのは

彼らが得意としている皮肉なユーモアなのだ。