雀羅

 

『月充る時』

 

門を開くと、そこは路地裏。

 

中天の月など知らぬげな暗がりと

体の芯から震えが来る様な冷気。

 

足元には生温い空気の澱み。

ゆるい風に乗って鼻腔に流れ込む

けものの臭い。

 

低いうなり。

針のような金色の瞳。

暗闇を満たすのは、無数の黒猫。

 

路地の奥には腐乱した

昔は彼らの飼い主だった肉塊。

 

幼かった猫たちは

飼い主に先立たれて術も無く

鼠の代わりに人を食い。

 

純白だった猫たちは

滴り落ちる血の味を覚えて

決して落ちぬ血の色にどす黒く染まり。

 

外界を知らぬ猫たちは

禁断の交わりを繰り返して

穢れた血族を培養し。

 

忠実だった猫たちは

光のささぬ路地裏で

新しい飼い主を待ち続け。

 

そして新たな訪問者。

 

つくりものの黒猫たちは笑いながら

赤い舌と白い牙を

ゆっくりあなたに向けました。