『Dune』

 

オススメ度:98

 

1991年に結成された『L'arc-en-Ciel』が1993年に発表した1st。

リリース時のメンバーはHyde(Vo)、Ken(G)、Tetsu(B)、Sakura(Dr)。

 

「Shutting from the sky」の開放感溢れる、しかし無秩序とは程遠い

印象的なギターリフで幕を開ける本作は、形にすると脆く崩れ去る幻想を

初期衝動に支えられた強靭な創作力、表現力でしっかりと捉えた

90年代ヴィジュアルシ−ンが生んだ傑作である。

 

現在のL’arcには絶対にありえないであろう音質・各パートのバランスの悪さや

構成の未熟さをよくわきまえた上で、管理人は未だに

「この作品こそ『L’arc‐en‐Ciel』の最高傑作である」という意見を変えていない。

 

タイトル曲「Dune」に代表されるように、楽曲はいずれも

”届かないもの”への憧憬、崩壊よりも穏やかな終末…腐蝕の予感に満ちており、

一つ一つの楽曲の中に通底するストーリーを感じさせるのは

Hydeの卓抜した作詞センスを生かす各パートの的確な表現力ゆえであろう。

「Entichers」で見せるKenのフラメンコ風のギタープレイや

「Flood of tears」の無造作な長尺も現在のL’arcと比べ合わせると一層興味深い。

 

この頃のHydeのVoは近来の作品で顕著な強さ…、激しさ、躍動感よりも

危うい粗さとナルシスが持つ魅惑的な表現力に満ちており

そこが逆に近作が持ち得ない大きな魅力となっているのだが、

逆に言えば全ての曲が完全に架空の世界を舞台にした

閉じた世界、モノローグとなっているという事でもある。

そしてそれこそが、おそらくL’arcがメジャーなシーンで自分達の音楽をより一層

広いフィールドに提示し、発展していく上で切り捨てられた物の中でも一番

重要なパーツだろうと思うし、そう言った部分を意識的に切り捨てて行ったからこそ

”ヴィジュアル系”が一時のあだ花として風化しつつある現在も

第一線で自分達の音楽をプレイ出来ている訳である。

 

現在のL’arcを指して単に「売れ線に擦り寄るから悪い」「ポップだから悪い」

と感情的に言うのは簡単だが、売れ線に乗る事の難しさ、ポップな曲を作ることの

難しさ…と考え合わせれば事態はそう単純ではない、とすぐに気がつく事と思う。

管理人が残念に思うのはこれほど虚構世界に説得力を与えうるバンドが

今、そういった世界に背を向けている、という只一点で、

技術的に上手くプレイする、上手く歌うプレイヤーは探せば腐るほど居ても

体験し終えて忘我の境地からふと我に帰るほどの魅力的な虚構を

見せてくれる表現者はやはり稀なのだ。

 

孤高の『BUCK‐TICK』や、シーンそのものの形成(!)を含めた

総合的な虚構世界を確立しようとしていた『MALICE MIZER』あたりは別格として、

この当時のL’arcこそ管理人にとってそういった世界に到達しうる可能性を

最も多く持ったグループ、と映っていたのであり、

到達したその世界こそヴィジュアルというシーンが生んだ一番の

成果になるだろうと信じていた。

 

管理人は、”メイクして表現する”という行いは

多かれ少なかれ表現者自身が(例えば恋愛の”共有体験”等の

”誰にでもありうる記憶”を表現する場合においてさえ)現実とは離れた

虚構の世界に足を踏み入れる、と表明する事であるはずだと

思っているし、また、メイクするからにはそういう気概が欲しい。

現在のL’arcからメイク、ファッション共にこの頃の面影が無くなり、

歌詞も閉じたモノローグに代わって広い聴き手を対象とした

共感の呼びかけに変わっているのは、彼らの創作者としての誠実さでもあろうか。

 

現在の彼らからは出てこない曲想、世界観に彩られた本作は、

刹那の愛情や憧憬に封をされた円環世界の中で巡り続ける

孤独な悲歌の集積によって

全体が儚げな”瞬間のユートピア”を形成しているのである。

 

/1999.9サイト開設時のレビュー/

 

ラルク・アン・シエルのファーストアルバムにして最高傑作。

後のラルクではバラバラになってしまう各要素、

すなわちポップさ、ダークさ、透明感が

各曲に程よく盛り込まれており、絶妙のバランスで

独自の世界を形成している。

 

また、Vo.hydeの詩も後のアルバムでは減少してしまう

エキセントリックな部分を前面に出して楽曲の繊細さを際立たせている。

「ビジュアル系」としてのラルクはこのアルバムで完成され、

これ以降の歴史は緩慢な崩壊の歴史であるとすら言えるだろう。

 

ヒットチャートの常連になった現在しか知らない人に

是非聞いて欲しいアルバム。