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『羽の追憶』

 

門を開くと、そこは街外れの丘。

 

細い一本道をたどって頂上に行き着くと

まばらな木々の間に瀟洒な館。

 

白い壁、硝子窓、オークの扉。

限られた人だけが訪れる事を許される

コーティザン(高級娼婦)の密やかな隠れ家は

わずかな使用人に守られて

街の喧騒を避けるようにひっそりと佇んでいます。

 

時計塔の真下の窓には、黒い瞳のあるじ。

夕闇迫る窓を開け放ち

翻るカーテンに身を任せ

身に纏うものも知らぬまま

彼方の街に遥かな視線。

 

毎夜毎夜、彼女の恋人になるために

様々な力を持った男達がこの館を訪れ、

一夜の思いを遂げては去っていきます。

 

ある者は権力。ある者は財産。

ある者は知力。腕力。美貌。

 

千夜一夜に天上の快楽と

めくるめく地下の背徳。

 

誰もが彼女を通り過ぎ

伝説だけを持ち帰り。

 

夜明けの光の中で彼女に残るのは

いつもと同じ控えめで寂しげな笑顔だけ。

 

仮初の恋人達が眠りについて、

ほんとに一人になれた時、

彼女の心に帰ってくるのは

幼い頃の淡い想い出。

 

今日もまた、日が沈みます。

 

艶めくドレスとローズウォーターを身に纏い、

夜毎に永遠の一夜を演じる定めの彼女は、

いつものように窓を開いて。

 

あの柔らかい追憶と戯れる

真夜中の訪れを待つのです。